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 終章 きみのさいわいのうた [ きみのたたかいのうた ]

 忙しない気配が駆けてくる。
「騒々しさは相変わらずですね、六代目」
 傍らに控えたシカマルが、揶揄するように言う。
「だねぇ……」
「あいつが七代目でいいんすか?」
 にやにやと笑うシカマルに、火影の椅子に座った銀色の大人は苦笑した。
「シカマル君だって、裏で随分走り回ってたみたいだけど」
「……同期のよしみですから」
「嘘つけ、サクラと陣頭指揮取ってたの誰だよ。なぁ、赤丸」
 ワォン、とキバの相棒が吼える。
「るせ」
 ノックの音がして、許可を受け開かれた扉からサクラが顔を出した。
「火影様、只今戻りました」
「お帰り。砂との会談はどうだった?」
「予定通りです。風影様からのお祝いの言葉を頂きました。ほらナルト、あんたの口から報告しなさいよ」
 どん、と背中を押されて部屋に飛び込んできたのは、こがねの髪を輝かせた青年。
「只今帰還しました。六代目」
 礼をとるのもそこそこに、満面の笑みを浮かべた。
「カカシ先生、十日ぶり!」
「おつかれさま、ナールト」
 にこやかに微笑みあう師弟に、サクラがため息をつく。
「そういうのは公の場所じゃないところでやってください。示しがつきません」
「サクラ、無駄だって。聞いてねえよ」
 キバがにやりと笑った。

「先生」
「ん?」
「あんさ、あんさ、知ってた? 今日月蝕があるんだってばよ」
 ナルトが声を弾ませる。
「我愛羅が教えてくれたんだ。結構凄いらしいから、帰ったら一緒に見ようぜ」
 いいよ、と返されるのを疑っていなかったナルトは、黙り込んだカカシに首を傾げた。
「……カカシ先生?」

 ほたり。
 カカシの藍色の右目から、雫が転がり落ちる。
 唐突に泣き出したカカシに、ナルトが激しく狼狽する。
「せ、先生?」
 カカシはほろほろ、と涙を零して。
 微笑んだ。
「おかえり、ナルト。────お帰り」
 その声は少し、震えていた。
 ナルトは瞑目し、にかりと笑って。
「ただいま、カカシ先生」

 うたうように、紡いだ。


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